大判例

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東京高等裁判所 昭和43年(う)1304号 判決

被告人 長谷川文夫

〔抄 録〕

所論は、原判決挙示の、被告人の検察官に対する昭和四三年三月六日付供述調書(原判示第二の(二)(三)の賍物故買の事実に関するもの)及び同月二六日付供述調書(原判示第三の(一)ないし(四)の賍物故買の事実に関するもの)は、いずれも不当に長く抑留された後の自白を内容とするものであるから、これを採証した原判決は憲法第三八条第二項に違反すると主張するが、原記録に徴すれば、被告人は昭和四三年二月六日原判示第一の窃盗教唆及び第二の(一)の賍物故買の被疑事実で逮捕され、同月八日勾留をうけ同月一六日右事実につき起訴され、同年三月四日第一回公判で審理されたこと、同月八日被告人は原判示第二の(二)(三)の賍物故買の事実につき追起訴され、同月一二日第二回公判を経て、同月二二日第三回公判が開かれ右故買事件の審理があつたこと、同月二七日被告人は原判示第三の各賍物故買の事実につき第三回目の起訴をうけ、同年四月六日の第四回公判で、この賍物故買の事件の審理がなされたことを認めることができる。

右の事実に徴すれば、被告人の検察官に対する昭和四三年三月六日付及び同月二六日付の各供述調書の自白は、いずれも、別件たる原判示第一の窃盗教唆、第二の(一)の賍物故買の事実に関する勾留中になされたことが明らかであるが、ある被疑事件につき勾留中の被疑者に対し、他の被疑事件につき取調をしたからといつて、特段の事情のない以上、右取調をもつて直ちに不利益な供述を強要したとはいえないし(昭和三〇年(あ)第二〇七六号、同三〇年一〇月一四日最高裁第二小法廷判決参照)、また所論のごとく余罪捜査中の理由で勾留を継続することは違法であるとの見解をとるとしても、その一事をもつて右勾留中の自白が無効であるとか、任意性を欠くものであるといえないところ(昭和二六年(あ)第四六八号、昭和二七年一一月二五日最高裁第三小法廷判決参照)、一件記録に徴すれば、被告人が当該拘禁に堪えかねて自白するような心身の状況にあつたとは認められず、従つて不任意のものとは認められないから、所論は採用しえない。

また所論も指摘するように、被告人の検察官に対する自白は、三〇日ないし五〇日抑留された後のものであるけれども、本件のように賍物故買の回数も多くて、金額も多額にのぼり、本犯の窃盗犯人も多数の共犯であるので、関係者を数多く取調べる要があり、従つて捜査にかなりの日数を要するのも、やむを得ないと認められる事情のある以上、右程度の勾留後の自白は、未だ憲法第三八条第二項にいう「不当に長く抑留または拘禁された後の自白」とは解しえないのであり(昭和二二年(れ)第三〇号、同二三年二月六日最高裁大法廷判決、昭和二三年(れ)第四三五号、同年一〇月六日同大法廷判決参照)、これを採用した原判決に違憲ないし違法はない。

(石渡 東 藤野)

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